その女の子は、とにかく「あがる」子でした。
模擬試験であろうと、ちょっとした塾の試験であろうと、本人は「あがる」というのです。
「あがるとどうなるの?」
「どきどきしてるの。だから問題を読んでいても、わからなくなっちゃう。」
ただ、その子のいいところは、そういうことを遠慮なく話すことでした。だから、担当の先生もお父さんもお母さんもみんな、まきこんでしまう。
その結果として、大量のお守り袋とゲン担ぎと称していろいろなルーティンをやって、初日を迎えました。
ルーティンというのは、例えば家を出るときに右足から出る、みたいな話です。たぶん誰かが「あがらないようになる」具体的な方法を教えてあげると「あがらない」という暗示がかかって大丈夫、というような話をされたのだと思うのですが、そのルーティンがいくつかあって家を出るのも結構大変、みたいな話だったと思います。
しかし、初日の試験でしっかりあがりました。
帰ってきて本人が曰く、
「だめなんです。もう試験会場に到着して、あの塾の先生の列と見たときから、おかしいの。あれ、いなくなってくれないかしら。」
だったそうです。
で、やはりダメ。
担当の先生からSOSが来ました。
「電話変わってもらっていいですか?」
ということで、出てみると、向こうでやはりクスンクスン。
「もしもし?」
「・・・・」
「もしもし、聞こえてます?」
「あ、はい。」
「一応、聞くだけ聞いておいてくれる?返事しなくてもいいからね。あがるのを止めようとするのはやめた方が良いのではないですか?あがるのはもうどうしようもないんだから、そこでまずいと思ってしまうことがいけないのです。あがるならあがればいいのです。土台、緊張する試験なんだから、いつも通りというのが難しいんです。だからあがってもいいの。ただね。あがってもいいから、そこでできることをちゃんとしてきてください。わかる?あがったな、と思っていいですから。あがっても今まで答えは書けてるでしょ?だったら、あがってもいいから、そこでできることだけしてらっしゃい。明日。」
「はい。」
まあ、クスンクスンは聞こえていました。担当の先生に代わって、またいろいろ話していましたが。
で、次の日。
やはりあがったそうです。ただ、翌日の電話ではこんな話をしていたそうです。
「もうね。あの先生たちの列も一度見ちゃったし、先生も大変だなあ、って思うことにしたの。机の前に座ったらまたあがったけど、もういいや、これが自分だから。自分なりにがんばろう、って決めたの。」
2日目、3日目と無事合格したんだそうです。
あがらないように工夫するということを考えるよりは、あがった自分を受け入れた方がよさそうですね。
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